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第8回日露大学長会議(第2回日露大学協会総会)

2019年9月23日、モスクワ国立大学サドーヴニチィ学長(ロシア学長連盟会長、ロシア科学アカデミー会員)と北海道大学笠原総長職務代理が第2回日露大学協会総会(第8回日露学長会議)を執り行いました。総会では、健康、医療、人材交流、地域開発主な議題として協議がなされました。

サドーヴニチィ学長は、日露両国の大学間交流が10年以も上続き、また2009年以来実施されている日露学長会議は大学間協力に係る議論や互いを知るための場となっている旨指摘しました。これまでの会議で署名に至った協力協定は、学部生、大学院生、教員および研究者などより多くの人々を引き付ける教育学術プロジェクトに変わっていきます。

また、日露の協力に積極的に参加している若者に大きな期待が寄せられています。彼らの関与により、二国間関係は新たな交流、活気、そして素晴らしいアイデアで満たされることになるでしょう。

サドーヴニチィ学長によると、人類にとって重要なものは医学に関係しており、当該分野での協力は非常に重要です。モスクワ国立大学の医療関係者は、筑波大学、新潟大学および東北大学と協力しています。例えば、医療フォーラムが共同で開催されたほか、学術プロジェクトも進められています。モスクワ国立大学再生医療研究所では、日本の技術を用いることで得られた幹細胞を扱っています。サドーヴニチィ学長は、両国の主要な大学付属病院間での学術教育協力についても提案しました。

サドーヴニチィ学長は、別のプロジェクトとして、モスクワ国立大学と創価大学による、放射線被爆者の退避や被爆者への支援を提供するロボットモジュールの共同開発について指摘しました。モスクワ国立大学では、医療ロボット「エンジェル」をベースにして、被爆者に対する遠隔医療支援を提供するロボットシステムと、被爆者退避のための携帯型医療モジュールが開発されています。

モスクワ国立大学および東京工業大学の科学者たちが非常に重要な研究を共同で行っています。彼らは、チェルノブイリ原子力発電所で生じた事故の経験を活かしながら、原子力の安全性に関する諸問題のほか、福島原子力発電所での事故の影響を撲滅する課題に取り組んでいます。モスクワ国立大学と日本の諸大学の間では、物理学、コンピューター技術、認知心理学等の分野で協力が進んでいます。

日露の学生達は、両国の協力発展のために積極的に関与しています。2018年の第1回日露大学協会総会において、日露学生連盟の創設が提案されました。2019年9月22日から9月27日にかけて、第8回日露学長会議の枠内で、第1回日露学生フォーラムが開催されました。このフォーラムには、日露の学生60名が参加し、エコロジー、医療、経済およびスポーツ等について議論しました。

2019年9月24日には第6回日露学術フォーラムが開催され、日露の研究者が
歴史学、建築学、哲学、心理学、言語学、文学、国際政治および環境学に関する最新の研究成果を発表しました。日本側団長を務めた北海道大学笠原正典総長職務代理は、日露大学協会の役割について語りました。外国語学習、集中的な教育コースおよび共同教育プログラムはいずれも、新たな日露教育の場を形作るものとなります。笠原総長職務代理は、自国のカリキュラムを他国のそれと関連付けることの難しさを指摘しました。また、日本の大学の66%は、学生が留学の際に履修した科目の単位互換に賛同していると強調しました。これらの問題を解決するにあたっては、日露大学協会総会の枠内で創設された、学術教育交流促進を担う専門グループが中心的役割を果たすことになります。

日露学術フォーラムには、ロシア連邦国家院教育科学委員会委員長兼モスクワ国立大学行政学部長代行のヴャチェスラフ・ニコノフ氏、連邦院科学・教育・文化委員会副委員長ヴィクトル・スミルノフ氏、芦立訓文部科学審議官、相木俊宏在ロシア日本国大使館特命全権公使が参加しました。フォーラムでは、日露の大学の関係者約30名が報告し、過去の学長会議で合意された諸協定を成功裏に実現させたことなどが紹介されました。

また同フォーラムでは、モスクワ国立大学、長岡技術科学大学および千葉大学の間で協力協定が締結されました。モスクワ国立大学と東京工業大学はこれまで交流がなく、今回のフォーラムで学術教育に関する協力協定を締結しました。新たな協定は、学術研究の先端分野における共同プロジェクトの発展に疑いなく寄与するでしょう。

大学は社会との繋がりを構築することも求められています。この点、サドーヴニチィ学長は、産業界や製造業界との関係構築も含まれていると指摘しました。フォーラムでは、「大学・科学・ビジネス」と題する展示会も行われました。この展示会には、日本の大手製造会社やモスクワ国立大学でイノベーションに携わる部門が自らの製品を紹介しました。

フォーラムの最後には、共同コミュニケに署名がなされました。